ジャケットデザイン

音楽が、いつの間にか「ただのBGM」になっていませんか。
通勤電車で流れる音楽も、仕事中にかける音楽も、気づけば何も感じなくなっている。
かつて夢中で聴いた音楽は、どこへ行ってしまったのでしょう。
1968年に生まれた『Super Session』は、そんなあなたに「音楽と向き合う時間」を取り戻してくれる一枚です。
計算されたヒット曲ではなく、わずか二日間の即興セッションで生まれたこの作品には、今も色褪せない緊張感と熱量が詰まっています。
この作品の3つのおすすめポイント

1. 偶然が生んだ完成度──事前準備を感じさせない即興の美学
本作最大の魅力は、計画通りに進まなかったからこそ生まれた、予測不能の緊張感です。
初日にMike Bloomfieldが5曲を録音した後、翌日スタジオに現れませんでした。 急遽呼ばれたStephen Stillsは、準備なしでセッションに飛び込みます。
結果として、一枚のアルバムの中に二つの異なる個性が共存することになりました。
「作り込まれた完成度」ではなく、「その瞬間にしか生まれない音」。 それがこのアルバムの核心です。
2. 二人のギタリストが描く対照的な世界観
Bloomfieldのブルース志向と、Stillsの洗練されたロック感覚。 同じオルガン奏者Al Kooperと演奏しながら、まったく異なる音楽が展開されます。
A面ではBloomfieldのレスポールが咆哮し、B面ではStillsのワウペダルが空間を満たします。 一枚で二つの表情を楽しめる構成は、リスナーを飽きさせません。
3. 2025年視点で再評価される「即興」の価値
今、音楽制作の現場ではAIやデジタル編集技術が当たり前になりました。 どんな音でも「修正」できる時代だからこそ、修正されていない生の演奏が新鮮に響きます。
2023年には4chサラウンド対応のSACD盤が日本でリリースされ、オーディオファンの間で再び注目を集めています。 完璧に作り込まれた音楽に疲れた耳に、この作品は新しい刺激を与えてくれます。
音楽スタイル

ジャンル
ブルースロック、サイケデリックロックを基調としています。
音楽的特徴
長めの演奏を軸に、オルガンとギターが主役となる構成です。 事前に緻密に構成された楽曲ではなく、その場の反応が演奏を導いています。 整いすぎていない音像が、演奏の生々しさを強く伝えます。 1960年代後半のFMラジオ文化が背景にあり、長尺曲が受け入れられた時代の空気を感じることができます。
類似アーティスト
- Paul Butterfield Blues Band:ブルースをロックに昇華した点が共通します。
- Electric Flag:Bloomfieldの音楽的延長線上にあるサウンドです。
- Blood, Sweat & Tears(初期):Kooper主導時代の実験性が近いです。
作品詳細・時代背景──1968年と2025年をつなぐもの

『Super Session』は、Al Kooperの発案による企画作品です。 彼が信頼する演奏家を集め、短期間で録音する構想でした。 1968年5月、ロサンゼルスでセッションは始まります。
初日はMike Bloomfieldが参加しました。 ブルースに根差した演奏が中心となり、器楽曲が多く録音されます。 しかし翌日、Bloomfieldは体調不良により現場を離れます。 代役として呼ばれたのがStephen Stillsでした。 Buffalo Springfield解散直後だった彼は、急な参加にも関わらず即座に適応します。
結果として、アルバムは二つの性格を持つ構成になりました。 1968年当時、ロックは即興性と拡張性を求められていました。 FMラジオの普及により、長尺曲も受け入れられ始めていた時代です。 本作は、そうした流れと強く結びついています。
商業的にも成功し、Billboardでは最高12位にランクインしました。
即興中心の作品が評価された点で、意義は大きいです。 『Super Session』は、演奏そのものが価値になることを示しました。 のちのジャム・バンドやスーパーグループという概念の先駆けともいえます。
では、なぜ2025年の今、この作品を聴く必要があるのか。
答えは明快です。 現代の音楽制作は、AIやデジタル編集によって「完璧」を追求できる時代になりました。 ボーカルの音程も、リズムのズレも、すべて修正可能です。 しかし、その「完璧さ」は時として、音楽から人間の体温を奪います。
『Super Session』には、修正されていない生の演奏があります。 Bloomfieldのギターが歪む瞬間、Kooperのオルガンが少しタイミングを外す瞬間。 そういった「不完全さ」こそが、この作品を生々しく、リアルなものにしています。
2023年には、1970年代に制作された4chクアドラフォニック・ミックスが、最新リマスターでSACD化されました。 日本盤は7インチ紙ジャケット仕様で、当時のLPデザインを忠実に再現しています。 オーディオファンの間では「この音源で聴いてこそ、本作の真価がわかる」と評価されています。
過剰に整えられた音楽に疲れた耳に、この作品は新しい刺激を与えてくれます。 音楽が「体験」だった時代の空気を、2025年の今、再び味わうことができるのです。
CD・LP・SACD──どれを選ぶべきか
CD盤(紙ジャケット仕様)
価格帯:約1,049円〜1,980円
Super Sessions
スーパー・セッション(紙ジャケット仕様)
こんな方におすすめ:
- まずは気軽に聴いてみたい方
- 通勤や日常のリスニングで楽しみたい方
- ボーナストラックも含めて全体を把握したい方
メリット:入手しやすく、価格も手頃。2003年の再発盤にはボーナストラック4曲が追加されています。
デメリット:音の空間表現や、アナログ特有の温かみは感じにくいです。
LP盤(180g重量盤)
価格帯:約3,400円〜(輸入盤・国内盤)
Super Session
こんな方におすすめ:
- 音質にこだわりたい方
- アナログならではの質感を楽しみたい方
- コレクションとして所有したい方
メリット:アナログならではの温かみと空間表現。Bloomfieldのギターの「歪み」やKooperのオルガンの「響き」がより立体的に聴こえます。Speakers Cornerなどのオーディオファイル向けリマスター盤も流通しています。
デメリット:再生環境が必要。盤の状態によってはノイズが入ることもあります。
SACD盤(4chサラウンド対応・日本盤)
価格帯:約4,200円(完全生産限定盤)
スーパー・セッションーSA-CDマルチ・ハイブリッド・エディションー – マイク・ブルームフィールド、アル・クーパー、スティーヴン・スティルス
こんな方におすすめ:
- 最高の音質で聴きたい方
- サラウンド環境を持っている方
- 究極のリスニング体験を求める方
メリット:1970年代に制作された4chクアドラフォニック・ミックスを世界初収録。7インチ紙ジャケット仕様で、当時のLPデザインを忠実に再現。2023年最新リマスターで、演奏の空間性が圧倒的です。
デメリット:価格が高く、SACD再生環境が必要。完全生産限定盤のため入手困難になる可能性があります。
迷ったら、まずはCD盤から。音質にこだわるなら、LP盤またはSACD盤を。
おすすめトラック3選
1. Albert’s Shuffle
アルバムの扉を開けるこの曲で、Bloomfieldのギターが一気に咆哮します。 シンプルなブルース進行の中で、表情豊かなフレーズが次々と展開されます。 「このギター、すごいですね」──大音量で聴いたリスナーがそう言ったという逸話が残っています。 本作の方向性を端的に示す、象徴的なオープニングです。
2. His Holy Modal Majesty
ジャズ的発想を取り入れた実験的な一曲です。 KooperとBloomfieldが、MilesやColtraneのモーダル・ジャズに挑戦します。 反復するフレーズが、独特の浮遊感を生みます。 当時のサイケデリック感覚がよく表れた、9分を超える長尺曲です。
3. Season of the Witch
Stephen Stills参加曲の代表例です。 Donovanの原曲の構造を活かしつつ、演奏で世界観を拡張しています。 Stillsのワウペダルが生み出す音の波が、11分間にわたって空間を満たします。 アルバムの象徴的トラックであり、多くのリスナーがこの曲で本作の虜になります。
全収録曲リスト(オリジナルLP)
- Albert’s Shuffle
- Stop
- Man’s Temptation
- His Holy Modal Majesty
- Really
- It Takes a Lot to Laugh, It Takes a Train to Cry
- Season of the Witch
- You Don’t Love Me
- Harvey’s Tune
※CD再発盤にはボーナストラック4曲が追加収録されています。
アーティスト歴史とメンバー──三者のキャリアが交差した瞬間

Al Kooper──音楽シーンの仕掛け人
Al Kooperは、1960年代から活躍するキーボーディスト、プロデューサーです。 1965年、Bob Dylanの「Like a Rolling Stone」セッションに飛び入り参加し、オルガンを演奏。 この偶然の参加が、Dylanのエレクトリック・サウンドを決定づけました。
その後、Blues Projectに参加し、Blood, Sweat & Tearsを結成。 しかし、商業的成功を求めるバンドの方向性に疑問を感じ、脱退します。 演奏だけでなく、プロデュース能力にも定評があり、Lynyrd Skynyrdのデビュー作をプロデュースしたことでも知られています。
『Super Session』は、Kooperが「ジャズのセッション方式でロックを録音する」という発想から生まれました。 彼は本作で、オルガン、ピアノ、ボーカル、さらにはOndioline(シンセサイザーの前身)まで演奏しています。 音楽ビジネスの最前線で戦い続けた彼だからこそ、「計算されていない音楽」の価値を知っていたのかもしれません。
Mike Bloomfield──白人ブルースギターの先駆者
Mike Bloomfieldは、シカゴブルースを基盤としたギタリストです。 白人ブルースギターの代表的存在とされ、感情表現を重視した演奏が特徴です。 1960年代、彼はPaul Butterfield Blues BandでB.B. KingやMuddy Watersといった黒人ブルースマンとステージを共にし、その実力を認められます。
Bob Dylanが1965年のニューポート・ジャズ&フォーク・フェスティバルでエレクトリック・ギターを持った際、バックを務めたのがBloomfieldでした。 Dylan本人が「彼は僕が出会った中で最高のブルース・プレイヤーだ」と語ったというエピソードが残っています。
その後、Electric Flagを結成しますが、バンド活動と並行してソロ活動も行います。 『Super Session』の録音では、初日に5曲を録音した後、翌日スタジオに現れませんでした。 理由は体調不良とされていますが、彼の複雑な内面を物語るエピソードです。
Bloomfieldは1981年、麻薬の過剰摂取により38歳で亡くなります。 晩年は演奏活動から遠ざかっていましたが、SantanaやElvin Bishopといった後進のギタリストたちが彼の家を訪れ、「あなたの演奏で人生が変わりました」と伝えたという逸話があります。 彼が残した音楽は、今も多くのギタリストに影響を与え続けています。
Stephen Stills──急遽参加した救世主
Stephen Stillsは、Buffalo Springfield解散直後に本作へ参加しました。 歌とギターを両立できる点が強みで、後にCrosby, Stills & Nashで大成功を収めます。 本作では、Bloomfieldが現れなかった翌日、急遽代役として呼ばれました。
準備なしでスタジオに入ったにも関わらず、Stillsは即座に状況に適応します。 彼が参加したB面では、ワウペダルを駆使した独特のサウンドが展開されます。 Bloomfieldのブルース志向とは対照的な、洗練されたロック感覚が際立ちます。
Stillsの参加により、アルバムは二つの異なる個性を持つ構成になりました。 結果的に、この「予定外の展開」が作品の魅力を高めることになります。 彼のキャリアにおいても、本作は重要なマイルストーンとなりました。
本作を支えたリズム隊
ベースのHarvey BrooksとドラムのEddie Hohは、本作のサウンドを支える重要な存在です。 Brooksは後にMiles DavisやJimi Hendrixとも共演する実力派ベーシストです。 Hohは堅実なドラミングで、即興演奏の土台を作り上げました。
三者のキャリアが交差した記録でもある『Super Session』は、個々の活動史を知る上でも重要な作品です。
個人的感想・まとめ──音楽と向き合う時間を取り戻すために

『Super Session』は、偶然と即興が生んだ完成形です。 計画通りに進まなかったからこそ、独自の魅力を持ちました。
この作品を聴くとき、私たちは「修正されていない音楽」に出会います。 完璧ではないかもしれない。 でも、だからこそ「生きている」のです。
かつて音楽は、「今この瞬間」にしか存在しませんでした。 レコーディング技術が発達した今も、この作品には「今この瞬間」の緊張感が刻まれています。
音楽がBGMになってしまったあなたへ。
『Super Session』は、音楽と向き合う時間を取り戻させてくれます。
ブルースロックの入口としても、深掘り用としても有効です。 配信やCDで気軽に楽しめます。 音の質感を重視するなら、LPやSACD盤も選択肢になります。 今なお評価され続ける理由を、ぜひ体感してみてください。
LP盤:Super Session
CD盤(紙ジャケ):スーパー・セッション(紙ジャケット仕様)
CD盤(ハイブリット):スーパー・セッションーSA-CDマルチ・ハイブリッド・エディションー – マイク・ブルームフィールド、アル・クーパー、スティーヴン・スティルス
CD盤:Super Sessions



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