あの名盤が今、あなたの手に届く
1970年代ロンドンのパブで鳴り響いた伝説の音楽です。
パンクが生まれる前夜に、英国の小さなパブで起きていた革命があります。
今こそ、その証人になれるチャンスです。
BEES MAKE HONEYの『BACK ON TRACK』は、パブロックの歴史を語る上で欠かせない1枚です。
Grateful DeadやEaglesが好きなら、絶対に聴くべき音源です。
なぜなら、このバンドはその両方のエッセンスを持っているからです。
Back on Track
ジャケットデザイン

音楽スタイル
【ジャンル】
パブロック、カントリーロック、リズム&ブルース
【音楽的特徴】
・Grateful DeadとEaglesを融合させたウエストコースト風サウンドです素朴で真っ直ぐなカントリーロックが基調です。
・ジャズ、ブルース、カントリーの要素を自然に織り交ぜています。
・派手さはないが、温かみのある職人的な演奏が光ります。
【類似アーティスト】
・Eggs Over Easy
・Brinsley Schwarz
・Chilli Willi & The Red Hot Peppers
・Little Feat
おすすめポイント3選
1. ライブとスタジオの両方が楽しめる贅沢な2枚組構成 Disc1はロンドンNashville Roomsでの1976年ライブ音源です。
Disc2は1972-75年のスタジオ録音を収録しています。 バンドの「生の熱気」と「スタジオでの職人技」、両方を一度に味わえます。 これほど充実したパブロックのアンソロジーは他にありません。
2. 幻の未発表音源とレア音源が詰まったコレクター必携盤 EMIがお蔵入りにした2ndアルバムの音源が収録されています。 DJMレーベルでボツになった音源も含まれています。
1973年のファーストアルバム以来、眠っていた宝物がここにあります。 パブロックマニアなら、この価値が分かるはずです。
3. Nick LoweやKate Bushと繋がる豪華プロデューサー陣 Nick Loweがプロデュースした「Hobo Song」が聴けます。 後にKate Bushと仕事をしたKevin McAleaも参加しています。
SupertrampのBob Siebenbergが初期メンバーだった事実も興味深いです。 パブロックシーンの家系図が、この1枚で理解できます。
Back on Track
アルバム基本情報
作品名:BACK ON TRACK: 2CD ANTHOLOGY
アーティスト:BEES MAKE HONEY
発売年:2003年
レーベル:Acadia Records
総再生時間:Disc1:約70分、Disc2:約73分
収録曲数:Disc1:13曲、Disc2:14曲
アルバム紹介
制作背景と歴史
BEES MAKE HONEYは1971年、ロンドン北部で誕生しました。
アイルランドのショウバンドThe Alpine Sevenの元メンバーが中心です。
Barry Richardson、Deke O’Brien、Mick Molloyが核となりました。
彼らはダブリンで腕を磨き、ロンドンで勝負をかけたのです。
バンド名は1972年1月、メンバーRuan O’Lochlainnの妻Jackieが提案しました。
拠点はロンドン北西部のパブ「Tally Ho」でした。
そこで、アメリカから来たEggs Over Easyと共演を重ねました。
この出会いが、英国パブロックシーンの始まりとなったのです。
パブロックシーンでの立ち位置
Brinsley SchwarzのマネージャーDave Robinsonに見出されました。
Dave Robinsonは後にStiff Recordsを設立する人物です。
1973年、EMIと契約し、シングル「Knee Trembler」を発売しました。
デビューアルバム『Music Every Night』はRockfield Studiosで録音されました。
音楽誌は彼らを「次のビッグバンド」と書き立てました。
しかし、メンバーチェンジが相次ぎ、バンドは不安定になります。
Bob Siebenbergは脱退し、Supertrampで成功を収めました。
1974年には2ndアルバムを録音しましたが、EMIは発売を拒否しました。
DJMレーベルに移籍して再録音するも、これもお蔵入りです。
1974年末、バンドは解散しました。
しかし1976年、一度だけ再結成ライブが行われました。
それがDisc1に収録されたNashville Roomsでの演奏です。
『BACK ON TRACK』の意義
2003年、Acadia Recordsがこのアンソロジーをリリースしました。
散逸していたスタジオ音源を丁寧に集めた労作です。
1976年の再結成ライブは、バンドの最後の輝きを記録しています。
Rate Your Musicでは5点満点中3.83点を獲得しています。
Amazonレビューでは「Grateful Deadに匹敵できた」という声があります。
「音楽の遺産から見逃していたもの」とまで評されています。
パブロックを真剣に聴きたいなら、この作品は避けて通れません。
サウンドの特徴
The Bandから影響を受けた内省的なサウンドが基調です。
時にメロウで、時に力強いロックンロールを奏でます。
EaglesやGrateful Deadのカバーも収録されています。
しかし、彼らの音楽は単なる模倣ではありません。
アイルランドのショウバンド出身らしい、人を楽しませる技術があります。
アメリカ西海岸のカントリーロックを、英国流に解釈しています。
派手さはないが、聴き込むほどに味わい深いサウンドです。
「誠実な音楽」という言葉がぴったりきます。
おすすめトラック3選
1. Tequila Sunrise
選曲理由: Eaglesの名曲を独自解釈したカバーです。
オリジナルの都会的な洗練を、パブロックの素朴さで包み込んでいます。
バンドの音楽性の幅広さを示す1曲です。
カントリーロック好きなら、まずこれを聴いてください。
2. Company Man
選曲理由: BEES MAKE HONEYのオリジナル曲です。
彼らの作曲能力とバンドアンサンブルの良さが凝縮されています。
「これほどの曲が大衆に届かなかったのは不思議」とレビューされています。
パブロックの隠れた名曲として、後世に残すべき1曲です。
3. Caldonia
選曲理由: Louis Jordanの古典的な名曲のカバーです。
BEES MAKE HONEYのライブ定番曲でした。
リズム&ブルースのルーツを感じさせる演奏です。
バンドの「ご機嫌さ」が最も表れている曲と言えます。
全収録曲
Disc 1: Live 1976 (Nashville Rooms, London)
- Tequila Sunrise
- Company Man
- Four Long Years
- Sylvie
- So Tired
- Namali
- Caldonia
- Stealin’
- Boogie Queen
- Don’t Stop Now
- Crossroads
- One More Saturday Night
- Red Hot
Disc 2: Studio Takes 1972-5
- Get on Board
- Chinee’s Dead
- Kneetrembler
- Kentucky Chicken Fry
- Highway Song
- Lead Me to the Water
- Booterstown
- Hobo Song
- Friends of Dawn
- Livin’ on the Road
- Country Soul
- Hanging on, Hoping Strong
- Get on Board
- Don’t You Know
Back on Track
アーティスト概要

【バンドの成り立ち】
BEES MAKE HONEYの物語は、アイルランドから始まります。
Barry Richardsonはダブリンのショウバンドシーンで活躍していました。
The Alpine Sevenというバンドで、Deke O’BrienとMick Molloyと共演しました。
彼らはダブリン初のリズム&ブルースバンドBluesvilleにも参加しています。
1960年代後半、Richardsonはロンドンに渡りました。
Brian Lemon Trioというジャズバンドで演奏しました。
Jan & the Southernersというカントリーロックバンドにも参加しました。
そこで培った経験が、後のBEES MAKE HONEYの音楽性を形作ります。
【パブロックシーンでの活動】
1971年、仲間たちをロンドンに呼び寄せました。
Ruan O’Lochlainn(サックス/キーボード)が加わりました。
そしてアメリカ人ドラマーBob Siebenbergが参加しました。
この5人が、BEES MAKE HONEYの原型です。
Tally Hoパブでの演奏が全ての始まりでした。
Eggs Over Easyとの共演で、パブロックという新しいムーブメントが生まれました。
Brinsley SchwarzやKilburn & The High Roadsとも交流しました。
ロンドンのパブシーンで、彼らは確実に存在感を示していきました。
Dave Robinsonがマネージャーに就任します。
彼の手腕で、バンドはEMIとの契約を勝ち取りました。
1972年、Rockfield Studiosでレコーディングが始まります。
1973年にシングルとアルバムがリリースされました。
【栄光と挫折】
デビュー時、音楽誌は彼らを絶賛しました。
「パブロックシーンで最も成功に近いバンド」と評されました。
T. Rexのサポートアクトとしてブリクストンアカデミーで演奏しました。
しかし、Marc Bolanの熱狂的なファンから激しくブーイングされました。
BBC2の『In Concert』に出演し、知名度を上げます。
しかし内部では亀裂が生じていました。
O’LochlainnとSiebenbergが1973年に脱退します。
Fran Byrne、Rod Demick、Malcolm Morleyが加入しました。
1974年、創設メンバーのO’BrienとMolloyが脱退します。
Willie Finlayson、Ed Dean、Kevin McAleaが新たに加わりました。
この新ラインナップで2ndアルバムをレコーディングしました。
しかしEMIは発売を拒否し、バンドを契約解除しました。
DJMレーベルで再チャレンジするも、またも発売中止です。
1974年末、バンドは解散を余儀なくされました。
短い活動期間でしたが、パブロックシーンに大きな足跡を残しました。
【その後のメンバーたち】
Bob Siebenbergは脱退後、Supertrampに加入しました。
「Bob C. Benberg」名義で、世界的な成功を収めます。
Fran ByrneはパブロックバンドAceに移籍しました。
Rod DemickとWillie FinlaysonはMeal Ticketを結成します。
Kevin McAleaは後にKate Bushのバンドメンバーになります。
1979年のツアーと2014年のロンドン公演に参加しました。
Malcolm MorleyはWelsh RockバンドManに参加します。
Ruan O’LochlainnはRiff Raffを結成し、若きBilly Braggと共演しました。
Barry Richardsonは自身のBarry Richardson Bandを結成します。
Deke O’BrienはダブリンでNightbusを結成しました。
そしてScoff Recordsを共同設立します。
それぞれの道で、音楽を続けていったのです。
【再結成と再評価】
1976年、一夜限りの再結成が実現しました。
ロンドンのNashville Roomsでのライブです。
このライブ音源が『BACK ON TRACK』のDisc1です。
解散後も、彼らの音楽を求める声は消えませんでした。
1977年、4曲入りEPがCharlyレーベルからリリースされました。
1996年、EMIの2枚組コンピレーション『Naughty Rhythms: The Best of Pub Rock』に収録されます。
2003年、ついに『BACK ON TRACK』がリリースされました。
2007年のコンピレーション『Goodbye Nashville, Hello Camden Town』にも参加しています。
近年、パブロックの再評価が進んでいます。
パンクの前触れとして、その重要性が認識されるようになりました。
BEES MAKE HONEYはその黎明期を支えたパイオニアです。
彼らなくして、パブロックの歴史は語れません。
【バンドの音楽的影響と特徴】
BEES MAKE HONEYの音楽は、複数のルーツを持っています。
アイルランドのショウバンドで培った「観客を楽しませる技術」です。
アメリカ西海岸のカントリーロックへの憧憬です。
そしてリズム&ブルースの伝統への敬意です。
The Bandの影響は明確です。
内省的でメロウなサウンドに、それが表れています。
Grateful DeadやEaglesからの影響も見逃せません。
しかし彼らは単なる模倣者ではありませんでした。
英国らしい「パブの音楽」として昇華させました。
派手なショーではなく、真摯な演奏で勝負しました。
Little Featのようなファンクの要素も取り入れています。
10ccのような知的なロックンロールの側面もあります。
「個性が少ない」という批評もありました。
しかしそれは逆に言えば「普遍性」があるということです。
流行に左右されない、誠実な音楽を作り続けました。
だからこそ、今聴いても色褪せないのです。
【オリジナルラインナップ(1971-1973)】
- Barry Richardson (B/Sax/Vo)
- Ruan O’Lochlainn (Sax/Key)
- Deke O’Brien (G/Vo)
- Mick Molloy (G/Vo)
- Bob “Cee” Siebenberg (Dr) – 後にSupertrampで活躍
【セカンドラインナップ(1973-1974)】
- Barry Richardson (B/Sax/Vo)
- Deke O’Brien (G/Vo)
- Mick Molloy (G/Vo)
- Fran Byrne (Dr) – 後にAceへ
- Rod Demick (G/B/Vo)
- Malcolm Morley (Key) – 後にManへ
【サードラインナップ(1974)】
- Barry Richardson (B/Sax/Vo)
- Willie Finlayson (G/Vo)
- Ed Dean (G)
- Kevin McAlea (Key) – 後にKate Bushのバンドへ
- Fran Byrne (Dr)
- Rod Demick (G/B/Vo)
【スタジオアルバム】
- Music Every Night (1973年、EMI)
- 唯一の正式なスタジオアルバム
- Dave Robinsonプロデュース
- Rockfield Studiosで録音
【未発表アルバム】
- 2ndアルバム (1974年録音、EMI – 未発表)
- Ed Dean、Willie Finlayson、Kevin McAleaが参加
- レーベルが発売を拒否
- 3rdアルバム (1974年録音、DJM – 未発表)
- これも発売されず、バンド解散の原因に
【コンピレーション/アンソロジー】
- Back on Track: 2CD Anthology (2003年、Acadia)
- Disc1: Live 1976
- Disc2: Studio Takes 1972-75
筆者の感想

この2枚組CDを聴いて、私は一つの確信を得ました。
「本物の音楽は、時代を超える」ということです。
1970年代、ロンドンのパブで鳴っていた音楽です。
50年近く経った今でも、その誠実さは変わりません。
派手なプロモーションも、大ヒット曲もありませんでした。
しかし、ここには「確かな音楽」があります。
Disc1のライブ音源を聴いてください。
観客の歓声、バンドの一体感、そして温かい空気感が伝わります。
これは単なる「古い録音」ではありません。
「その場にいたかった」と思わせる、生きた音楽です。
Disc2のスタジオ音源も素晴らしいです。
Nick Loweがプロデュースした「Hobo Song」の完成度です。
未発表に終わった2ndアルバムの音源が聴けることです。
これらは全て、音楽ファンにとっての宝物です。
あなたがもし、The BandやGrateful Deadが好きなら。
あるいはBrinsley SchwarzやNick Loweに惹かれるなら。
この『BACK ON TRACK』は、絶対に聴くべき1枚です。
パブロックの歴史を知らなくても、良い音楽は良いのです。
Amazonで今すぐ購入できます。
在庫は限られていますが、まだ手に入ります。
この音楽を聴かずに、70年代ロックは語れません。
あなたのコレクションに、この1枚を加えてください。
音楽の歴史に埋もれた宝石を、今、手に取るチャンスです。
BEES MAKE HONEYの『BACK ON TRACK』です。
一度聴けば、あなたも虜になるはずです。



コメント