ジャケットデザイン

1960年代、ビートルズが世界を席巻する裏側で、アメリカの若者たちはガレージで歪んだ音を鳴らしていました。
その衝動を最も象徴するバンドのひとつが、The Standellsです。
彼らの代表曲を網羅したこのベスト盤は、単なる懐古趣味では終わりません。
剥き出しのギターリフ、鋭く刺さるオルガンの音色。
それらは数十年経った今も、不思議なほど瑞々しく響きます。
パンクロックのルーツとも言える荒々しいエネルギーに触れたいなら、まずこの一枚を手に取るべきです。
CD版 :Best of
LP(アナログ盤:Best of [Analog]
音楽スタイル

- 音楽ジャンル: ガレージロック、プロトパンク
- 音楽的特徴: 歪んだファズギターとチープなオルガンの音色が交錯するサウンド。シンプルで力強いビートが、若者の苛立ちやエネルギーをストレートに表現しています。
- 類似アーティスト:
- The Seeds – サイケデリックな要素を併せ持つ、西海岸ガレージの盟友
- The Sonics – ガレージロックの荒々しさを極限まで高めた先駆者
この作品のおすすめポイント3選
- ① ガレージロックの教科書的な選曲
伝説的コンピレーション『Nuggets』にも収録された「Dirty Water」を筆頭に、バンドの黄金期を支えた楽曲が凝縮されています。
この一枚を聴くだけで、60年代中盤のUSガレージシーンの空気感を完璧に把握できます。 - ② Rhino Recordsによる高品質リマスター
1983年にリリースされたこの編集盤は、名門Rhino Recordsが手がけた傑作です。
オリジナル盤の持つ「熱量」を損なうことなく、ファズギターの歪みやドラムの打音が太く響きます。 - ③ 後のパンクシーンへ続く反骨精神
彼らの楽曲に流れる「アウトサイダーとしての視点」は、70年代以降のパンクロックに直結しています。
上品なポップスとは一線を画す、無骨で反抗的なアティチュードこそが、本作が時代を超えて愛される最大の理由です。
CD版 :Best of
LP(アナログ盤:Best of [Analog]
作品基本情報
- 作品名: The Best Of The Standells
- アーティスト名: The Standells
- 発売年: 1983年(オリジナルLP)/ 1985年(CD)
- レーベル: Rhino Records
- 収録曲数: 18曲
作品紹介

「The Best Of The Standells」は、1980年代に再評価の機運が高まった際、名門Rhino Recordsによって編纂されたベストアルバムです。
1962年にロサンゼルスで結成されたThe Standellsは、当初は洗練されたナイトクラブでの演奏を主としていました。
しかし、プロデューサーのEd Cobbと出会ったことで、彼らの運命は大きく変わります。
1965年に録音され、1966年にリリースされた「Dirty Water」は、ボストンの汚れた川を舞台にした皮肉めいた歌詞と、中毒性の高いギターリフで全米11位の大ヒットを記録しました。
興味深いことに、この曲はボストンについて歌っていますが、バンドメンバーは全員ロサンゼルス出身で、録音時点でボストンを訪れたことがありませんでした。
当時のアメリカ音楽シーンは、英国勢の「ブリティッシュ・インヴェイジョン」に対抗すべく、各地の若者が独自のサウンドを模索していた時期です。
Standellsはその急先鋒として、洗練とは対極にある「粗削りな美学」を提示しました。
本作は、彼らの代表的なアルバムから、エッセンスだけを抽出しています。
収録曲の多くは、短い演奏時間の中に強烈なインパクトを詰め込んだものです。
そのスタイルは、後に登場するパンクロックやガレージリバイバルのアーティストたちに多大な影響を与えました。
歴史的な視点で見れば、彼らは「一発屋」と評されることもあります。
しかし、本作に収められた楽曲群を聴けば、彼らが単なる流行品ではなかったことが分かります。
ボストンのスポーツシーンで今なおアンセムとして愛される「Dirty Water」に象徴されるように、彼らの音楽は時代を超えた普遍的な「若者の叫び」を内包しているのです。
おすすめトラック3選
Dirty Water
ガレージロック史上、最も有名なリフのひとつを持つ名曲です。
抑制されたAメロから、サビでの爆発的な盛り上がりへの構成が見事です。
ボストンへの愛憎が入り混じった独特の歌詞世界も、当時のロックとしては異彩を放っています。
ボストン・レッドソックスやブルーインズの勝利後に流れる公式アンセムとして、今も愛され続けています。
Sometimes Good Guys Don’t Wear White
「育ちのいい奴らが正しいとは限らない」という反抗的なメッセージが、歪んだサウンドに乗せて歌われます。
この曲に宿るアティチュードこそが、彼らがプロトパンクと呼ばれる所以です。
極めてシンプルながら、一度聴いたら離れない旋律を持っています。
後にMinor ThreatやThe Crampsがカバーするなど、パンク・ハードコアシーンへの影響も計り知れません。
Why Pick On Me
疾走感溢れるビートと、切迫感のあるボーカルが特徴的なナンバーです。
若者特有の疎外感や焦燥感を、わずか2分半の中に凝縮しています。
ガレージロックが持つ「スピード感」と「ポップさ」の絶妙なバランスを体感できる一曲です。
Billboard Hot 100で54位を記録し、「Dirty Water」に続くヒット曲となりました。
CD版 :Best of
LP(アナログ盤:Best of [Analog]
全収録曲リスト
- Dirty Water
- Sometimes Good Guys Don’t Wear White
- Why Pick On Me
- Mr. Nobody
- Riot On Sunset Strip
- Try It
- Can’t Help But Love You
- All Fall Down
- Pride And Joy
- Poor Shell Of A Man
- 19th Nervous Breakdown
- Medication
- Black Olives
- Riot On Sunset Strip (Alternate Version)
- Rari
- Barracuda
- Little Sally Tease
- Someday You’ll Cry
アーティスト概要

アーティストの歴史
The Standellsは、1962年にアメリカ・ロサンゼルスで結成されました。
中心人物であるLarry Tamblynを中心に、当初はジャズやスタンダードナンバーも演奏する器用なバンドでした。
しかし、メンバーチェンジを経てDick Doddがドラムとボーカルを兼任するようになると、そのサウンドはより攻撃的でワイルドな方向へとシフトしていきます。
彼らの全盛期は1966年から1967年にかけてです。
「Dirty Water」の成功により、映画『Riot on Sunset Strip』への出演を果たすなど、当時の若者文化の象徴的な存在となりました。
音楽的には、ファズペダルを多用したギターと、Voxオルガンのチープで鋭い音色がトレードマークです。
これは当時の米国のティーンエイジャーたちが憧れた、最もクールで刺激的な音でした。
1960年代後半にサイケデリック・ロックが台頭すると、バンドは徐々に勢いを失い解散に至ります。
しかし、70年代のパンク、80年代のガレージリバイバルを経て、その評価は不動のものとなりました。
単なる「古いロック」としてではなく、いつの時代も変わらない「衝動」を体現したバンドとして、現在も多くのミュージシャンからリスペクトを受けています。
2025年3月、創設メンバーのLarry Tamblynが82歳で逝去しましたが、彼らの音楽は永遠に生き続けます。
主要バンドメンバー
- Larry Tamblyn (Org, Vo) – 1943年2月5日生まれ、2025年3月21日逝去
- Tony Valentino (Gt) – 本名Emilio Bellissimo、1941年5月24日生まれ
- Gary Lane (Ba, Vo) – 1938年9月18日生まれ、2014年11月5日逝去
- Dick Dodd (Dr, Vo) – 元Mouseketeer、2013年11月29日逝去
スタジオアルバム一覧
- The Standells in Person at P.J.s (1964) – ライブアルバム
- Dirty Water (1966) – 代表作。Billboard 52位を記録
- Why Pick On Me – Sometimes Good Guys Don’t Wear White (1966)
- The Hot Ones! (1966)
- Try It (1967)
- Bump (2013) – 40年ぶりの新作
筆者の個人的感想

「The Best Of The Standells」は、ロックンロールが持っていた初期衝動を、最も純粋な形でパッケージした作品です。
代表曲を網羅した本作は、ガレージロックというジャンルへの最良の入門書であり、同時に究極のゴールでもあります。
アナログLPでその音圧に圧倒されるのも、配信やCDで手軽にその鋭いセンスに触れるのも自由です。
どのフォーマットで聴いたとしても、スピーカーから溢れ出すエネルギーに違いはありません。
もしあなたが、音楽に「綺麗さ」ではなく「真実の叫び」を求めているのなら、このアルバムを聴かない手はありません。
今すぐ、その針を落としてみてください。



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