【初期衝動の名盤を探している方へ】パンク以後の知性を体感できる「My Aim Is True」を紹介

【初期衝動の名盤を探している方へ】パンク以後の知性を体感できる「My Aim Is True」を紹介 音楽レビュー
この記事を書いた人
ちゃちゃ丸

音楽コレクター歴25年、CD/レコード保有枚数2,500枚超|70年代パンク・ガレージロック専門|40代会社員として働きながら、マニアックな名盤から隠れた良盤まで実際に購入してレビュー|「次に聴くべき1枚」を探している音楽ファンのために、忖度なしの本音レビューをお届けします|愛犬:アメリカン・コッカー・スパニエル

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ジャケットデザイン

1977年7月22日、パンクの熱気がロンドンを覆う中で登場したのが、Elvis Costelloのデビュー作「My Aim Is True」です。

荒々しさだけが評価されがちだった時代に、このアルバムは言葉とメロディの強さで異彩を放ちました。

鋭い観察眼を持つ歌詞と、ポップスとして成立する楽曲構成が同時に鳴っています。

後の評価を待たず、最初から完成度が高い点も重要です。

初期衝動と職人的な作曲力が同居した一枚として、今なお聴き継がれています。

この作品がなければ、その後のニューウェーヴやパワーポップの展開は違ったものになっていたかもしれません。

知的なロックの扉を開いたこの名盤は、あなたのライブラリに不可欠な一枚となるでしょう。

🎼 音楽スタイル

項目詳細
音楽ジャンルパンクロック、ニューウェーブ、パワーポップ、パブロックです。
音楽的特徴シンプルなギターを軸にした編成です。テンポは速いですが、演奏は整っています。

感情よりも言葉が前に出る点が特徴です。パンクの攻撃性を、ポップスの形式に収めています。

1950年代のロックンロールやR&Bの影響も色濃く反映されています。
類似アーティストGraham Parker
Nick Lowe
Joe Jackson

✨ この作品のおすすめポイント3選

① デビュー作とは思えない完成度です

初作でありながら、曲構成と演奏は非常に整理されています

勢いだけに頼らず、すべての曲が明確な形を持っています。

荒削りな衝動と、計算された構成が見事に両立しています。

批評家たちは発売当初から「1977年で最も期待できるデビュー作」と評価しました。

後年の名作群の原型が、すでにここにあります。

② 歌詞がロックの表現を広げました

恋愛や仕事への不満を、皮肉と観察で描いています

感情を叫ばず、言葉で刺す手法が新鮮でした。

当時のパンクとは一線を画す、文学的なアプローチです。

Rolling Stoneは、Costelloの歌詞を「密度の高い言葉遊びと豊かな語彙」と評しています。

パンク以後のロックの可能性を示した作品です。

③ 盤ごとの違いが楽しめます

UK盤とUS盤で収録曲が異なります。

特にUS盤追加曲の「Watching the Detectives」は重要な楽曲です。

この曲はレゲエの影響を受けた独特なリズムが特徴です。

US盤は1977年11月にColumbia Recordsから発売され、ビルボード200で32位を記録しました。

聴き比べる楽しさが、所有欲を高めます。

📀 作品基本情報

項目詳細
作品名My Aim Is True
アーティスト名Elvis Costello
発売年1977年
レーベルStiff Records(UK)/ Columbia Records(US)
総再生時間約34分07秒(UKオリジナル盤)
収録曲数12曲(UKオリジナル盤)/ 13曲(US盤)

フォーマット情報

UK盤は12曲構成です。

US盤ではシングル曲の「Watching the Detectives」が追加収録されました。

聴くフォーマットによって体験が異なります。

UK盤の初期プレスには、裏ジャケットの色違いバージョンが11種類以上存在すると言われています。

コレクターにとっても魅力的な作品です。

📝 作品紹介

「My Aim Is True」は、Declan Patrick MacManusがElvis Costelloと名乗り制作した最初のアルバムです。

彼は当時、コンピュータプログラマーとして働きながら音楽活動を続けていました。

その立場だからこそ、日常の違和感を正確に言葉へ落とし込めたのです。

録音はロンドンのPathway Studiosで行われました。

1976年末から1977年初頭にかけて、わずか6回の4時間セッションで制作されています。

プロデュースを手がけたのは、パブロックシーンで活躍していたNick Loweです。

伴奏には、アメリカのカントリーロックバンドCloverのメンバーが参加しました。

契約上の理由で、当初はクレジットされていませんでした。

1977年は、パンクが社会現象となった年です。

Sex PistolsやThe Clashなど、多くのバンドが破壊衝動を前面に出していました。

しかしCostelloは、怒りを整理し、歌として提示しました。

この違いが評価を分けた理由です。

発売当初から音楽誌の評価は高く、知的な新人として注目されました。

Trouser Press誌は「1977年で最も期待できるデビュー作」と称賛しました。

Melody Maker誌は「今年発売されたアルバムの中で比肩するものはわずか」と評しています。

後年、Rolling Stoneなどでも高評価を受けています。

商業的成功以上に、表現の幅を広げた点が重要です。

このアルバムは、パンクとポップスの橋渡し役となりました。

衝動と構築美が共存する形を示したのです。

その意味で、音楽史的にも重要な一枚です。

パンクの持つエネルギーを、より洗練された形で次世代に繋げました。

UK盤は発売から約1ヶ月後の8月にチャート14位を記録しました。

US盤は、当時のアメリカで最も売れた輸入盤として記録されています。

🎧 おすすめトラック3選

曲名(英字)選曲理由具体的な魅力
Alison静かなバラードです。

感情を抑えた歌い方が、かえって切なさを強めます。

彼のソングライターとしての資質が際立つ名曲です。

後にLinda Ronstadtがカバーした点も、この曲の完成度を示します。
アコースティックな響きと、簡潔ながら示唆に富む歌詞が印象的です。

主人公の諦念と優しさがにじんでいます。

CostelloはこのバラードでSex Pistolsとは異なる方向性を明確に示しました。
(The Angels Wanna Wear My) Red Shoesアップテンポで親しみやすい楽曲です。

軽快なリズムの中に、皮肉が忍ばせています。

アルバムのポップ面を象徴する一曲です。

タイトルのユニークさも魅力です。
パワーポップ的な疾走感と、一捻りあるコード進行が秀逸です。

短い曲ながら、強いインパクトを残します。

1950年代ロックンロールへのオマージュも感じられます。
Less Than Zero跳ねるようなリズムが印象的です。

初期のライヴでも頻繁に演奏された重要曲です。

社会的テーマを個人の視点で描いています。

初期Costelloの批評性がよく分かります。
リズム隊のタイトな演奏が光ります。

メロディのフックも強力で、聴く者を惹きつけます。Costelloの最初のシングルとして1977年3月に発売されましたが、当初は注目されませんでした。

しかしアルバム収録後に再評価されました。

🎵 全収録曲リスト(UK盤)

  1. Welcome To The Working Week
  2. Miracle Man
  3. No Dancing
  4. Blame It On Cain
  5. Alison
  6. Sneaky Feelings
  7. (The Angels Wanna Wear My) Red Shoes
  8. Less Than Zero
  9. Mystery Dance
  10. Pay It Back
  11. I’m Not Angry
  12. Waiting For The End Of The World

※US盤追加曲

  1. Watching The Detectives

🎤 アーティスト概要

アーティストの歴史

Elvis Costelloは、1954年8月25日、ロンドンのPaddingtonで生まれました。

本名はDeclan Patrick MacManusです。

父親はジャズ・ポップ歌手のRoss MacManus(本名Ross MacManus)であり、幼少期から音楽的な環境で育ちました。

母親のLillian MacManusは、レコード店で働いており、Costelloは幼い頃から多様な音楽に触れる機会がありました。

若い頃からギターを手にし、フォーククラブで演奏していました。

1970年代前半は、D.P. Costello名義でカントリーロックバンドFlip Cityで活動します。

しかし大きな成功は得られませんでした。

その後、当時勢いのあったインディーズレーベル、Stiff Recordsと契約しました。

Elvis Costelloという名前は、Elvis Presleyと彼の祖母の旧姓Costelloを組み合わせたものです。

これは、レーベルのJake Rivieraが注目を集めるために提案したものでした。

しかし、評価されたのは音楽の中身です。

Costello自身はPresleyに対して特別な思い入れはありませんでしたが、名前の変更を受け入れました。

彼の特徴は、歌詞の知性とジャンル横断性です。

ロックに限らず、ソウルやカントリー、オーケストラとの共演にも取り組みました。

1981年には、カントリーアルバム「Almost Blue」を発表し、多くのファンを驚かせました。

アルバムごとに方向性を変える姿勢も評価されています。

また、多くの後続アーティストに影響を与えました。

知的なロックの一つの基準を作った存在です。

Paul McCartneyやBurt Bacharachとの共作でも知られています。

1999年には、BacharachとのコラボレーションでGrammy賞を受賞しました。

長期にわたり活動を続けている点も特筆すべきです。

2003年にはRock and Roll Hall of Fameに殿堂入りしました。

彼は現在も現役で、探求心を失っていません。

2018年にはバンドThe Impostersと共に30枚目のスタジオアルバム「Look Now」を発表しました。

50年以上にわたるキャリアで、600曲以上を作曲しています。

主要バンドメンバー(My Aim Is True)

  • Elvis Costello (vo, g)
  • John McFee (g, pedal steel g)
  • Sean Hopper (key)
  • Johnny Ciambotti (ba)
  • Micky Shine (dr)

※このアルバムのレコーディングに参加したバンドCloverのメンバーです。

CloverのリーダーであったHuey Lewisは、このセッションには参加していません。

主要バンドメンバー(The Attractions – 1977年結成)

  • Elvis Costello (vo, g)
  • Steve Nieve (key)
  • Bruce Thomas (ba)
  • Pete Thomas (dr)

※「My Aim Is True」発売後、Costelloは新たにThe Attractionsを結成しました。

このバンドで1978年の「This Year’s Model」以降、数多くの名作を生み出しました。

スタジオアルバム一覧

  • My Aim Is True (1977) – デビュー作、UK14位、US32位
  • This Year’s Model (1978) – The Attractionsとの最初の作品
  • Armed Forces (1979) – UK2位、US10位を記録
  • Get Happy!! (1980) – ソウル・R&B色が強い作品
  • Trust (1981)
  • Almost Blue (1981) – カントリーカバーアルバム
  • Imperial Bedroom (1982) – 実験的な傑作
  • Punch the Clock (1983) – 「Everyday I Write the Book」収録
  • Goodbye Cruel World (1984)
  • King of America (1986)
  • Blood & Chocolate (1986)
  • Spike (1989) – 「Veronica」収録
  • Mighty Like a Rose (1991)
  • The Juliet Letters (1993) – 弦楽四重奏との共演
  • Brutal Youth (1994)
  • All This Useless Beauty (1996)
  • Painted from Memory (1998) – Burt Bacharachとの共作
  • When I Was Cruel (2002)
  • North (2003)
  • The Delivery Man (2004)
  • Momofuku (2008)
  • Secret, Profane & Sugarcane (2009)
  • National Ransom (2010)
  • Wise Up Ghost (2013) – The Rootsとの共演
  • Look Now (2018) – 30枚目のスタジオアルバム
  • Hey Clockface (2020)
  • The Boy Named If (2022) – Grammy賞ノミネート

※33枚以上のスタジオアルバムを発表しており、ジャンルを超えた多様な作品群を残しています。

💭 筆者の個人的な感想

この記事を書くにあたり、改めて「My Aim Is True」を聴き直しました。

デビュー作でありながら、これほど完成された作品は稀です。

1977年という時代において、パンクの破壊衝動とは異なる道を選んだCostelloの勇気に敬意を感じます。

このアルバムの最大の魅力は、「言葉の力」です。

「Alison」の抑制された感情表現、「Red Shoes」の軽やかな皮肉、「Less Than Zero」の社会批評。

どの曲も、言葉が音楽の前面に立っています。

しかし決して難解ではなく、初めて聴く方でもメロディの美しさに引き込まれるでしょう。

UK盤とUS盤の聴き比べも、ぜひ体験していただきたいです。

「Watching the Detectives」が加わることで、作品全体の印象が変わります。

この曲のレゲエ調のリズムは、Costelloの多様性を予告するものでした。

CDで手軽に聴くのもよし、配信で気軽に試すのもよし、LPで音の質感を楽しむのもよし。

どのフォーマットで聴いても、この作品の本質的な価値は変わりません。

パンク以後のロックを理解したい方、知的な音楽を求めている方に、この一枚を強くおすすめします。

今から聴いても遅くはありません。

Elvis Costelloの奥深い世界への扉を、この作品で開いてみませんか?

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